これからの CMS に求めるものは何でしょうか
森田
藤田さんには丁度1年くらい前に、今回のようなインタビューをしましたがあれから a-blog cms を使ってどうでしたか?
藤田
あの時は、バージョンが 2.1 の頃でしたね。
森田
あれ、そんなに前でしたっけ?
藤田
作り始めた頃は今のバージョン 2.6 とは随分違いましたが、某案件で出来たばかりのレイアウトモジュールや関連エントリー機能なんかを凄く活用させていただき、とてもお客さまに好評でしたよ。 そして、実装する側からしても作りやすかった。
森田
あれ? 藤田さん実装もされるんですか?
藤田
してましたねー。でも、今年からしないようにしようと思ってますけど。
この1年間でレイアウトモジュールの使い方も分かってきた。こうして欲しいなってのも少しありますが、今の段階でもかなりよく使えるようになってきましたね。
レイアウトモジュールがある事によって、お客様もそのページ内の要素を好きに配置できるし、ここは何をするためのものなのか機能的にモジュールを選んで好きなように作れるというところが、ある程度のルールにのって作れるというのは良さでもありますね。
実装側も、もともと a-blog cms で持っていたモジュールという考え方を意識してできるようになったのが大きいですね。
森田
レイアウトモジュールを通して、ということですね。
藤田
そうですね。もしかしたらその後レイアウトを大きく変えないかもしれないけど、ちゃんとモジュールとして独立して、かつなるべく交換可能性が高いように心がけていたのですが、実際できたものが、それほど交換可能性が高くないこともあったけど、でも、そうする事が後々には、いいよねって思うようになったので、とってもいい機能だと思います。
森田
ありがとうございます。これからのa-blog cms に欲しい機能や、期待することはありますか?
藤田
結構、期待するところは、既にお願い済みで実現してしまっているので、ある意味 Ver.2.6 が期待するという点で、とても「ありがとうございます。」というところなんですよ。
ほかには今、何が欲しいかなぁ? カスタムユニットでのカスタムフィールドグループ的な繰り返しが使えるようになるといいな。
森田
言ってしまえば、そういう小さな機能が欲しいくらいなんでしょうか。
藤田
意外に、そんなもんかなって思います。今年は、a-blog cms の機能的なところを、ある意味アップルップルさんにお願いするだけじゃなくて、自分のところで開発し公開していこうと思っています。
森田
それは、ありがたいですねー
藤田
もう、校正オプションとか、これは使うだろうなってのは、どんどん用意してGithub にあげていこうかな
森田
普段、よく使う校正オプションとかオリジナルモジュールとかストックがあるんですか?
藤田
ストックもありますよ。今だと案件単位で校正オプションを作ってるので、いつでも使えるように汎用的に使えるものににしたい。
四則演算とかもありますね。この値を足すとか、掛け算とか割り算するとか、余りを出すとか。余りを出せるようになると繰り返しのところでIF文と合わせると便利なこともあるので。
森田
なんだか、私とは違う a-blog cms の使い方ですね。
藤田
それらを今年やろうと思っているのに加え、拡張アプリも作って売っていこうかな。
森田
どんな拡張アプリを作ろうとしているんですか?
藤田
今は、位置情報系のアプリを考えてます。スマホでアクセスしたら、県とか市が分かってそれらにあわせた情報を出せるようにする拡張アプリですね。
森田
へぇーー、凄い! みんな使ってみたいと思います。
藤田
だといいですけどね。
アップルップルさんで作ってもらってもいいですけどね。僕がこういった事をすることで、もしかすると他の開発者さんも、どんどんやってくれるかもしれない。 アップルップルの作ってる a-blog cms の周辺に何か、それぞれの機能を作ってくれると、少しはアップルップルさんが楽になるんじゃないかな。
森田
お気遣いありがとうございます。
確かに、他のユーザーグループとかを見てると、a-blog cms はプログラムを暗号化しているからなのか、それともノンプログラマーの方が使うことが多いからなのか、作って公開しよう、という方が少ない気がしているので、すごくありがたいです。
藤田
まぁ、そうですね。
この1年間で一番大きかったのは、アップルップルさんにいろいろサポートしていただいたので、僕も含め、僕と一緒にやっていただいた皆さんも、非常に恩を感じでいるので、なんとか返せればなぁって感じです。
森田
きっと、こちらのドキュメント不足とか、そういう点もあったかもしれません…。ご迷惑おかけしております。
藤田
そこも、本当は何かねぇ。
ドキュメントもサポートできればなぁってというふうに思ったりもしつつ、僕がブログさえ書けない人なのできっと、性格としてダメなんですよね。継続は力なりみたいな、継続することができない人間なんで瞬発力だけで生きてます。
藤田
あとは、この1年で大きかった事としては僕はフラットにCMSを扱う方の人間だと思うんですけど、なんかもう a-blog cms でいいんじゃないかと思うケースが増えています。
森田
おお、ありがたいです。今は、どんな割合でCMSを使っているんですか?
藤田
1つで大きな案件をしているのでそればかりなんですが、今は、a-blog cms で提案していたりもします。 残念ですが、お客様に「へぇー、そんな CMS あるんですか」と言われることが多い ので、それがいずれなくなってくれるといいですね。
森田
…営業活動を頑張ります!
森田
お客様に a-blog cms をご提案したときに「WordPress がいい」とか、そういった要望もあるんでしょうか?
藤田
あー、実は僕は WordPress も提案をしていたり、 WordPress でいいかなって思うケースもあるんですね。 でも、やっぱりお客様側が WordPress を敬遠されることもあるんですよ。
あと、うちにCMSを発注して、デザインとかディレクションをしている会社さんたちのほうが、WordPress はなるべく避けたいって感じで言われることが多い。
森田
そうなんですね。
藤田さんは、WordPress で提案するもの、 a-blog cms で提案するもの、その他の CMS を提案するものというのは、どういった使い分けでCMSを提案をされているんですか。
藤田
まずは、サポートの部分。これは評価されることが多くて、サポートがありますよって言えるのはa-blog cmsの強みですね。 あと、CMSとして使うWordPressの場合、プラグインの集合体になっちゃうことが多いんですが、a-blog cms なら単体でできあがってますよってところ。
a-blog cms は 1個いれたら機能としてできあがっていて、WordPress だったらプラグインを入れるなり、プラグインを開発しつつ作っていれるなりが発生するので、まぁ、その部分が変わってきますかね。 WordPress 単体だとかなりシンプルなので。
森田
お客様もそういったことを気にされていますか?
藤田
まぁ、お客様が気にする点は、まず WordPress はセキュリティがこわい。
そう言われたときには 「WordPress のセキュリティがこわいというのは、ちゃんとしたメンテナンスしていったりとか、変なプラグイン入れたりとかしないとか、ちゃんと最初から初期設定としてやることをやっておけば、それほどでもないですよ」 って話をさせていただいていてるんですけど「いやー、そこまでは出来ない」みたいに言われることが多くて、お客様はそういうのを嫌がりますね。
森田
そうなんですね。藤田さんのお客様はCMSの事をいろいろ知っている方が多そうですね。
藤田
森田さん、これで何年目でしたっけ?
森田
私、今3年目で、もうちょっとで満3年になります。
藤田
それは凄い成長スピードですね。まだ、アップルップルに入る前にお会いしたときを考えると凄いなぁー。
森田
お会いしてましたっけ?
藤田
一応、バイトかなにかに来てたのか、勉強に来てたのかな。来てたときに一道さん(編注:アップルップル代表 山本一道)から一回紹介されたことがあって。
森田
本当ですか。
藤田
それが今では、テーマを作ってるし。うーん、その頃には想像できなかったですね。すごいなと思います。 あと、お仕事をしている中で、なにかCMSについて思うことあります?
森田
私がですか。実は、最近 CMS ってなんだろう? って考え始めていて…
藤田
深すぎるー。
森田
デジタルアセットマネージメントというものがあることに、今年の頭くらいで初めて知ったんです。あと CMS の中でも Web CMS っていう種類があることを知って。
森田
じゃあ、a-blog cms はコンテンツを管理するのは、Web のコンテンツだけなのか、それとも、Webにもコンテンツと全く同じ内容のPDFがあるから、PDFのファイルとかも更新できるようにした方がとかできたらいいのかなって考え始めてしまって。 実際に私が関わっているサイトの中にも、PDF と Web のコンテンツで内容が一緒のものがあって、こういうところを「一緒に管理できないのかなぁ」とか「できるようになったらいいのにな」 とか思うんですけど、 でも a-blog cms は分類的に Web CMS だからどうなんだろうなとか。
藤田
きっと、今でもできますよ。 要は PDF を作るってところで言うと、全然できると思うんですよ。 たぶんデジタルアセットマネージメントの方はもうすでにある PDF とか、すでにある資料とかを管理して、それを複数人で管理しつつ、管理だけじゃなくて校正していったりとか。
それこそ、ECMというエンタープライズコンテンンツマネージメントっていう数千万円以上するものもあるんですが、すべてのケースでそこまでやる必要があるのかというと、なんともいえないところだと思うんですよ。
藤田
そうなってくると、大企業とかでちゃんとした著作権を守ったりとか、コーポレートとしてたくさんのドキュメントを問題なく作ってくということになってくるので、ちょっとオーダーというか、そもそも求められているものが違うかなぁって気がする。
森田
ですよねぇ。うーん。
藤田
デジタルアセットマネジメントを作るとなると、「誰か」がまた大変な事に…(アップルップルの事務所を見て)。 Adobe さんとかも、デジタルアセットマネジメント機能は持ってますし、Saasでも今後いくつかのベンダーが出してくる可能性はありますよね。
森田
そうなんですね。じゃあ、やっぱりCMSだからといってそこまでこだわらず、他のサービスと連携するようなことも必要なんですね。
藤田
デジタルアセットマネージメント CMS なんだろ? と考えはじめる20代前半の女の子ってのは凄い! でも、ある意味、毒されてる気が...
藤田
かなりの a-blog cms サイトを手がけていると思うんだけど、そんなときに足りないなぁって思う事ってないですか?
森田
「足りない」ですか…。足りない事はすぐにプログラマーさんに言って、a-blog cms に反映してもらったり、特殊なものであれば独自でモジュールを作ってもらったりしますね。
藤田
なるほどー。
今回、僕らも一部はカスタムモジュールを作ったりとかしてるし、そういうことができる CMS なんだよっていうことを意外に知らない人が多い。
藤田
a-blog cmsはWeb制作者に優しいCMSというイメージが強いですが、カスタムモジュールとかはその領域と違うところなのかなと。 なので、プログラマにとっても使えるCMSですよっていうのは個人的には思うんですけどね。
森田
テーマとか CSS フレームワークはどうですか?
藤田
CSS フレームワークは Bootstrap や Foundation を使ったりしています。今回も Bootstrap で制作していますね。a-blog cms の Bootstrap のテーマも作られてるんですよね。
僕が気になるのは、a-blog cms の管理画面用のCSSフレームワークですけど、今度のリリースでこんな風に Bootstrap 3 が 4 になった、みたいなことはあったりするんですか?
森田
ちょっと言い訳になっちゃうかもしれませんが、時間が取れてなくてどうしようかなぁというところなんです。でも、Flexboxを使う人がきっと増えてくると思うのでどうやってユニットに組み込んでいこうかとかは考えていますし、CSSプリプロセッサーは、今LESS を使ってるんですけどSass に変えるか、それとも css next を使うとか。
森田
他にやっていることとしては、テーマのテンプレートの話になりますが、Set_TemplateやSet_Rendered で、テンプレートを変数化してモジュールの管理とかを管理しやすいようにできないか、次回のテーマに向けてどう使っていこうか検討しているところです。
藤田
Set_Template と Set_Rendered 、実はまだ案件では使ってないんですが、ついに今回とある案件で使うことに。
まだ、詳しいその仕様はわかってないんだけど、でも、過去にやった案件ではあういうのを使うと凄くやりやすいし、テンプレートの数も減るし。その情報として、あるところにまとめているものは、あとはそれを使いまわしてやっていけるっていう設計もできるんで、すごく期待してる。
森田
あれって、もともと Movable Type の機能なんですか?
藤田
いや、他のCMSでも普通にありますね。
森田
私自身、まだあまり実装したことがない機能なので、どうやったらテンプレート数が減らせるとか、どうやったら効果のある使い方ができるのか、試行錯誤しているところなんです。参考に Movable Type の使い方を見ていたら普通に変数を格納するのに使っていたりとか、とくにテンプレートを格納するために使っていないんだなぁと思ったんですが、どうなんでしょうか。
藤田
まぁ、そうですねぇ。 あと他のCMSだとset_array 配列を定義できるようなのがあって、例えばカスタムフィールド1,2,3,4,5,6 とかってあるじゃないですか。 1個目の要素として、カスタムフィールド1個目、2個目、3個目として配列に追加して、後でループでよびだせたりする。
森田
新しい機能のリクエストが出てきましたよー。
藤田
まぁ、無くてもなんとか頑張るからいいかなとも思いつつ、欲しいところではそういうのもあったりしますけど。 要はテンプレートを書くときにどうしてもループの要件は入ってくるので、そこがテンプレート言語でできるといいなって思いつつ、自分たちでなんとかしようかなと思ったり。
Set_Template とはまた違うんだけど、校正オプションでできないかなぁって、いろいろ考えたりしています。それを呼び出すためにはモジュールが必要だよなとかそんな感じです。
そういう Set_Template とかを森田さんが使って、またプログラマ的っていうか、なんだかそういう動的な情報設計を理解されているというのが3年目にしては凄いなって思います。
森田
ありがとうございます。
藤田
常に進化してる森田さんはアップルップルでは、どうなっていきたいんですか?
森田
モジュールの考え方は好きなんですよ。最近、 a-blog cms の設計を考えるのが楽しいんです。
JavaScript とかで作ったかっこいい技術は堀さん(編注:アップルップル エンジニア 堀悟大)がやってくれるので、メンテナンス性がいいものとか、案件で、他の人や過去に作ったもののテンプレート見てると、「なんだこれー!」となったりするので、そういったのを防げないかなとか考えてます。
藤田
こわい!見せたくない!
森田
a-blog cms じゃなくて、これからの CMS に求めてることはありますか?
藤田
これからですか。まず余計な CMS は出てこなくていい。これ以上、CMS増えなくていいよ。
森田
今でもよいものがたくさんあるから、ということでしょうか?
藤田
正直な話、かなり機能飽和していて、あとは UI だけだと思うんですけど、UI もまぁ、それぞれの CMS が頑張っていけばいいのかなぁ。だから、これから新しいCMSを作ろうとしている人には、他のものを作った方がいいよって思ったりはしてますね。
で、CMSたちをいろいろ見ると、機能的にはそんな大きな変わりはなくて、だけど Laravel でできますとか、何々のフレームワークでできてますとか、 ちょっと、JSフレームワークでやってますとか、で差別化されたりすることもあるんですが、お客様にとってはどうでもいい事なんですよね。 正直な話、Web CMSが、なになにのベースでできてますってあんまり、どうでもいいし、むしろ Laravel が好きなら、CMS以外の他のモノを作った方がいいんじゃないかなぁって思う。
CMSに求めるものとしては、いい管理画面とか、情報を更新をしていくときのUI/UXを改善することを、ぜひ頑張って欲しい。
藤田
今リリースされている CMS の人たちには 管理画面の UI を頑張って欲しい。 Movable Type とかだと、DATA API を利用して自分で作れるんですよ。なので、次の Movable Type 7 にはとても期待しているんですよ。
藤田
そういう意味では a-blog cms の管理画面も、今後どうなってくのかなぁっていうのは、すごく思いますけどね。
森田
わかりました。山田さん(アップルップルのデザイナー)に伝えておきます。
藤田
ぜひ、そこは期待しております。
森田
ありがとうございます。
藤田
今回も、いろいろ書けない事ばかりしゃべりましたね。(1/3ほどカットしています)
森田
a-blog cms のことから、CMS全般についてお話していただきました。藤田さんは、これからはCMSの管理画面のUIや更新するときのUIについて注目しているとのことでした。REST APIなどの更新画面を拡張できる機能が各CMSでは配布されているので、これからのCMSの動向がますます気になりますね。
さらに、前回から1年経った今、a-blog cms の現状を理解していただいた上で、校正オプションや拡張アプリを公開していただけるということだったので、1人の a-blog cms ユーザーとして、うれしいです。